臨床検査技師(MT)のおもな業務は検体検査と生理機能検査ですが、採血業務が含まれていることも少なくありません。MTが採血するのはどういう時なのでしょうか。

とくに採血というと看護師のイメージが強いので、なぜMTの仕事にこの業務が含まれているのか不思議に感じている方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、実はMTが採血する機会は意外に多く、今後就職や転職をする際にも結果に大きな影響を与えることも少なくありません。

今回は、MTが採血するのは、どのような場合が多いかということや、なぜMTがこの業務を行うようになったのか背景となる事情について詳しくご紹介していきます。

1. 臨床検査技師は採血する機会が多い

採血に関しては、職場によってその機会が多いところと、まったくこうした業務がないところがあります。ここでは採血業務が多い職場について説明します。

 ①.病院

大きな病院の場合、採血室が設けられていることも多く、採血室に配属された場合は仕事のほとんどの時間が採血という人もいるでしょう。

また、病院によっては当番制で行っているケースもあります。技術的に不安を抱えるMTの場合は、比較的採血しやすい検診センターなどで採血に慣れるようにしているところもあるようです。

 ②.クリニックや検診センター

クリニックでの仕事内容は生理機能検査が大部分を占めますが、採血なども行うことがあります。ただし、スタッフの人数が少ないため、採血だけを行うといったケースは少ないと言えます。

検診センターの場合は各種健康診断を行っていますが、ローテーションで業務を行うというより、超音波検査や採血などが担当制になっていることが多いです。

 ②.血液センター

MTが採血業務を行うことが多い職場としては、血液センターも挙げることができます。献血会場や献血ルームで献血者から採血を行う仕事や関連した業務を行います。

2. 臨床検査技師には検査のための採血が認められている

検査では高い精度や迅速な処理が要求され、検体が不適切な方法で採取されると検査結果に大きな影響を及ぼすため、臨床検査技師(MT)が採血から検査まで一貫して行うことが望ましいと言えます。

そのため、MTには検査のために静脈血液を採取することが認められています。とはいえ、法律で定められた部位以外からの採血や動脈採血、検査目的以外の採血は認められていません。

 ①.臨床検査技師が採血できる部位は?

MTが採血を行う場合、臨床検査技師等に関する法律施行令第8条で、「耳朶、指頭及び足蹠の毛細管並びに肘静脈、手背及び足背の表在静脈その他四肢からの表在静脈」のみが認められています。

 ②.臨床検査技師は血液以外の検体採取もできる?

2015年4月からは採血以外でも一部の検体採取の業務が認められるようになりました。具体的にはインフルエンザなどの検査のための鼻腔拭い液や咽頭拭い液の採取が含まれています。

しかしながら、2015年4月1日以前にMTとなった人が、このような採血以外の検体採取を行う場合には、厚生労働大臣が指定している講習会を受講する必要があります。

3. 採血業務が認められるようになった背景

以前、臨床検査技師は衛生検査技師と呼ばれていて、血液や尿などの検体検査を主に行っていました。その後、臨床検査の進歩に伴って、生理検査や採血などができるよう法律改正の声が高まります。

1970(昭和45)年に法律が改正され、臨床検査技師が誕生しましたが、この時これまで衛生検査技師が行っていた検査に加えて、生理学的検査や検査のための採血が認められるようになりました。

この時の血液の採取量としては、検査のために行っていることから厚生省の通達によって20ml以内とされていましたが、現在では医師が必要を認めた場合は、20ml以上の採取も可能となっています。

このように、MTの採血業務が認められるようになった背景には、臨床検査の発達に伴う日本衛生検査技師会の働きかけが大きかったということが分かります。

4. 採血は練習あるのみ

臨床検査技師(MT)の中には採血は苦手で、できればしたくないという人もいるでしょう。学校ではシミュレーターなどで採血の実習などがありますが、患者を前にすると緊張する人もいます。

しかしながら、病院やクリニック、検診センターの求人では超音波検査の経験と並んで、採血もニーズが高く、仕事内容に含まれていることが少なくありません。

そのため、模擬血管を使った採血の練習を行うなど、若くて練習をしやすい環境にあるうちに、できるだけ採血の技術をマスターしておくことがおすすめです。