臨床検査技師(MT)と臨床工学技士は、ともに工学系医療職種で名前も似ているため、医療関係者でも違いが良く分からない人もいますが、その仕事には実は大きな違いがあります。

一例としてMTは昭和45年(1970年)に誕生した国家資格ですが、臨床工学技士は今から約30年前の昭和62年(1987年)に誕生した比較的新しい職種です。

今回は、MTになるか臨床工学技士になるか悩んでいるという方のために、両方の資格の働き方や年収などの違いや、どのような人に向いているのかについて詳しくご紹介していきます。

1. 臨床検査技師と臨床工学技士の違い

臨床検査技師(MT)と臨床工学技士は、働く場所や業務そのものが違います。ここでは、両者の仕事内容の違いや働き方の違いについて見ていきましょう。

 ①.業務の違い

MTは病院などの医療機関で検査を専門的に行うのがおもな業務です。検査には患者の体から採取した血液や尿などを調べる検体検査と、心電図や超音波検査を行う生理機能検査があります。

また、MTは検査に必要な採血を行うことも認められています。医師も検査を行えますが、医療機器の高度化が進んでいる現在ではMTが検査を行い、医師は診断や治療に専念するのが一般的です。

一方で臨床工学技士はとくに生命維持管理装置の操作やメンテナンスがおもな仕事です。それ以外にも病院で使用する輸液ポンプや除細動器、電気メスなど医療機器の点検・修理を行います。

おもに病院内の手術室や心臓カテーテル室、透析室などで働き、慢性腎不全や心臓に疾患のある患者さん、緊急に治療を必要とする患者さんを対象に働いています。

 ②.働き方の違いは?

病院勤務のMTや臨床工学技士の場合、基本的には日勤として働きますが、大きな病院では夜間の当直や休日出勤があります。MTの場合は次の当番に残った検査を引き継ぐため、残業は少ないです。

ただ、24時間帯体制の臨床検査センターで働くMTの場合は、夜勤を含むシフト制なので生活が不規則になりがちなほか、検体の数が多いときは残業が発生することもあります。

臨床工学士の場合は、緊急手術が入ったときや急患が運ばれてきたときは、日勤だったとしてもそのまま残業になるケースが多いと言えます。

また、夜勤がない医療施設でも、業務時間外に機器のトラブルや緊急手術が入った場合には、自宅に帰宅した後でも呼び出しがかかることもあります。

2. 年収やキャリアの違い

次に臨床検査技師(MT)と臨床工学技士の年収やキャリアの違いについて見ていきましょう。

 ①.年収の違い

MTの平均年収は2020年に厚生労働省が発表した「賃金構造基本統計調査」によると、約493万円となっています。新卒からベテラン技師までの平均のため、人によって年収に差があります。

臨床工学技士の年収は厚生労働省の調査に含まれていませんが、一般的にはMTと同じ年収か少し少なめなことが多いようです。

 ②.キャリアの違い

MTの場合、さまざまな認定資格を取得してスキルを磨き、専門分野のスペシャリストになる道があるほか、リーダー研修やマネジメント研修を受け、技師長など管理職を目指す道もあります。

臨床工学技士の場合もMTと同様のキャリアが考えられ、さまざまな分野の認定資格を取得して専門性を高めていく道と、リーダーや主任など役職を目指す道などがあります。

3. 臨床検査技師と臨床工学技士の特性

これまで見てきたように、臨床検査技師(MT)と臨床工学技士にはさまざまな違いがありますが、それぞれの職種はどのような人に向いていると言えるか考えてみたいと思います。

MTの場合は、検査や分析といった仕事がメインとなるため、理系の人や生物、科学の分野に強い関心を持っている人が向いています。また、標本などを作成するので手先の器用な人も向いています。

一方、臨床工学技士は医療機器のスペシャリストとして、医療機器の操作や保守点検の仕事を行うため、機械に関心がある人や説明書を読むのが好きな人などに向いていると言えます。

さらに、どちらの職種も患者さんと関わったり、チーム医療の一員として他職種の人と連携したりする必要があるため、円滑なコミュニケーションを取れる人が向いていると言えるでしょう。

4. 資格を取得する難しさ

最後にそれぞれの資格を取得する難しさを見ておきましょう。いずれの資格も年に1回の国家試験に合格することによって資格を取得することができます。

国家試験の合格率は、どちらも70%~80%前後となっているので難易度に大きな差はありません。どちらの資格も学校で講義をしっかり受け、国家試験対策をすれば決して難易度は高くないと言えるでしょう。