臨床検査技師(MT)が働く場として、病院・クリニック・臨床検査センター・医療機器メーカーなどがあります。一つの職場で長く業務にあたる方もいれば、新しい職場を求めている方もいるでしょう。

今までの経験を生かせる職場や、未経験だけど興味のある分野への転職を希望している方のなかには、臨床検査センターに関心を寄せている方もいると思われます。臨床検査センターの業務は病院やクリニックとどう違うのでしょうか。

臨床検査センターは自分に向いている職場なのか不安を感じている方のために、仕事内容や特徴についてご説明します。

1. 臨床検査センターの1日

日勤・夜勤がある臨床検査センターの1日の流れについて、日勤者である臨床検査技師(MT)の一例をご紹介します。

 ①午前

全体朝礼の後、部署ごとの連絡事項が伝えられます。担当部門での朝一番の仕事は、夜勤者からの引き継ぎと、試薬の準備、検査機器の立ち上げです。

依頼紙に基づき、前日夜間にルート集配担当者が持ち帰った検体の検査を行い、異常値が出たものは再検査をして間違いがないことを確認します。検査結果が出たらデータ入力者に渡し、報告書を作成してもらいます。

検査の合間に、医療機関や支所との問い合わせ対応、試薬・器具の在庫確認や発注などを行います。

 ②午後

昼食後、午前中に集められた検体の検査を行います。途中から夜勤者と並行して検査業務にあたります。同部門でも、日勤者と夜勤者の業務が全く同じであるとは限りません。

日勤の担当分の検査が終了したら機械・器具の洗浄、検体・試薬の片付けをします。退社時間直前やそれ以降に飛び込みの検査が入る場合、通常は夜勤者が行いますので、基本的には定時で退社します。

2. 臨床検査センターでの仕事内容

臨床検査センターでは、ルート集配スタッフが取引先の病院やクリニックから持ち帰った検体を臨床検査技師(MT)が検査を行っています。医療機関では対応していない検査項目を臨床検査センターが代行する、検体検査に特化した企業です。

多くの医療機関から検体が集められるので、検査数は膨大です。そのため、検査部門がきちんと分かれており、各MTが担当する検査項目は固定されています。

 ①免疫血清検査

肝炎ウイルスや関節リウマチ、膠原病などへの罹患を調べるために血清を用いて検査をします。血液型検査や輸血適合試験(クロスマッチ)も行います。

 ②血液検査

血計、アナリーゼ、凝固検査を行い、貧血や白血病、血液凝固異常などを見つけます。

 ③生化学検査

血清を用いて血液中の糖・脂質・タンパク質・電解質などを測定し、臓器の異常を見つけます。

 ④微生物検査

検体を培養し、感染症の原因菌の同定や薬剤感受性試験を行います。

これらのほかにも尿・便の一般検査や病理検査、遺伝子検査などがあります。

3. 病院との違い

病院やクリニックで働く場合、患者さんだけでなく多職種のスタッフとのコミュニケーションが必要となる場合があります。臨床検査センターでは検体という「モノ」が対象となるため、あまりコミュニケーションを取ることはなく検査に集中できます。

多くの医療機関から検体が集められるので検査数が多く、担当部門のデータについては詳しくなり、スペシャリストを目指すことができます。また専門性の高い検査を担当する可能性もあります。

最近は超音波検査の経験を採用の条件としている病院やクリニックもよくありますが、臨床検査センターではそのような絞った条件はないので、選びやすい転職先の一つと言えます。

給与面で見ると、病院は規模や業績によって賞与に違いが出るため、年収が変わってきます。また超音波検査を行う臨床検査技師(MT)の給料は高くなります。

臨床検査センターでは超音波を行わないのでその分の差額はありません。しかし、夜勤をする場合は夜勤手当が付き、役職になれば役職手当も付きます。

4. 臨床検査センターがおすすめの人

臨床検査センターは検体検査を主体としているため、患者さんと接する検査より黙々と行う作業を好む方に向いていると言えます。多くの検体検査を行いさまざまな症例にあたる可能性が高いため、一つの分野のスペシャリストになりたい方にもおすすめです。

臨床検査技師(MT)はどの職場でも正確な検査を行うことが必要ですが、臨床検査センターでは膨大な検体数でも取り違えなどのミスを犯さないことが求められます。そのため臨床検査センターには特に正確さを重視する方が向いているでしょう。